エハラ・カツヒコ/住宅の設計 | |||
様々な課題/基盤づくり/発想のためのキーワード等 住まいの夢の実現には、土地や資金計画、発注等の様々な課題があります。 それらのいくつかを、建築士の専門分野やその他の領域から眺めてみます。 目次/インデックス |
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<はじめに/1.住宅建築/検査済証の取得> ここでは、構造や室内環境など住宅の性能に関する基準を満足している建築であること。建築基準法第7条第5項に定められた検査済証の取得を前提とし、ほか自治体で定められた条例に準じる住宅建築を対象としています。□ |
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<はじめに/2.土地/用途地域内の宅地> 原則として、住宅は宅地以外には建てらないこととなっていますので、地目が宅地(※1)であることが必要です。ときどき、農地や山に建てられているのを見ることがありますが、法的条件付きで、ほとんどが原則的に建替などの再築が不可能です。 (※1)宅地。ここでは、住宅完成の際の検査済証取得を前提としていることから、都市計画法第8条第1項第1号にある用途地域内の土地。道路・公園・河川その他の公共以外の土地。としています。用途地域内では、住宅は工業専用地域以外の用途地域で建てることができます。 宅地でない土地や農用地は、住宅を建てるために、地目変更や農地転用などの許可申請手続きが必要となります。地域の司法書士や土地家屋調査士などにご相談ください。□
< 補 遺 /2.土地/市街化調整区域内の規制> 都市計画法上、市街化調整区域内の土地では建築や開発行為が抑えられています。住宅を建てる場合、その土地に住宅を建てるしかるべき理由、必然性が必要です。通常の建築確認申請とは別に(都市計画法第43条の規定に基づく建築許可 )申請が必要です。また、調整区域内の土地が農地の場合は、43条申請と並行して、農地転用許可申請が必要です。必ずしも建てられないわけではありません。 参考 検索 行政ホームページ 『佐世保市 市街化調整区域の住宅建築の規制緩和』 『西海市 土地・道路・河川 』 『大村市 指定地域及び指定地区等の概要.』 『長崎市 都市計画法の開発許可制度』 『諫早市 市街化調整区域における住宅建築の規制緩和』 『平戸市 都市計画図の閲覧』 近年、市街化調整区域内での住宅建築の規制緩和もあり、以前より建てやすくなりましたが、土地取得予定の際には事前に、法的許可要件を満足する土地かどうか、それ以外にも、ライフライン、給水や下水道の状況など、十分に調べておく必要があります。□
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<将来ビジョン/主人公は住まい手> 将来ビジョンについて。 少し先の未来をのぞいてみてください。住まい手、ご家族おひとりおひとりの将来の姿やその背景にある未来の部屋の様子について整理してみること。それは住宅をこれから建てることにおいて、とても意味のあることです。資金計画とともに、住宅建築で大切な、はじめのステップです。 将来ビジョンについて整理することは、誰にも気兼ねすることなくできますし、なによりもお金がかかりません。 整理するのは少したいへんと思いますが、スタートから2年先、5年先、10年ごとといったように、適当だと思われる年次ごとに区切って、住まい手ひとりひとりの未来を想像しながら、スケジュールをたててみます。この中には建築の資金計画から返済までといった一連の流れも含まれます。 未来は見えないので、抽象的になりがちですが、楽しいことや苦いこと、可能なかぎりそれらのイメージを具体的な言葉や図でとどめてみる。現在から未来に託す望みや言伝(ことづて)のようなものであってもよろしいですし、絵で表現してみるのも有効な方法かと思います。これらの言葉やイメージ画の蓄積は、実際的な住宅設計や建築現場においてとても説得力があり、将来ビジョンにマッチした住宅実現に、有効な指標としてはたらきます。 うまくいかず、どうしてもスケジュール図や表にまとめづらいならば、適当に、小さい紙に思いついたまま将来像をメモしてそれらを箱にためてみる。とか、ひとつの紙にマインドマップ化してみるといった方法なども、あとで、組み替えたり、読み解いたりして編集できますので有効です。未来の情景を引き出す手段として、試されてみてはいかがでしょうか。 参考 検索 『フリーソフト マインドマップ』 『KJ法』 未来を想像してみる引き出しを見つけるひとつの手段として、対象を住まい手だけに限らず、建物の内と外に分けてみて、敷地という範囲の中に含まれる事物にも目を向けてみる方法もあります。 住まい手 : 主人公。住まい手ひとりひとりの未来像、一員として生き物ふくむ 土 地 : 不動産としての利用形態・資産価値。周辺景色との関係 住 宅 : 住宅建物としての資金計画・返済計画・資産価値、耐用年数など 住宅の内 : 手放せない家具調度品や伝来の美術品や骨董 住宅の外 : 敷地の中にあるもの。土地。植生をふくむ さらにこれらを、時間を経るごとにすみやかに変化していくもの、少しづつ変化していく、ほとんどあまり変化しないもので分けてに見る。この機会に思い出の度合いで分類してみると、また別のひらめき、将来ビジョンをさししめすキーワードにであうかもしれません。 なお、建て替えや賃貸などからの引っ越しの場合、新築に持ち込み予定の既存の家具・調度品・電化製品および衣類・書籍・美術品などのリスト化は、必ず準備されておいてください。あとで必要となります。家具・調度品などについては、縦・横・高さの寸法。くわえて写真があれば申し分ありません。 将来ビジョンを引き出すには、いろいろなやり方があると思います。できる限り住まい手さんご自身の方法で整理されてみてください。□
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<土地の分類/借地権や所有権/条件付き土地など> 新たに用地を必要とする場合について。 @ 借地。通常の借地権(契約期間の更新がある改正前の借地権)のほか、平成4年8月施行の比較的安価で借地権を設定できる一般定期借地権(契約期間の更新がない)があります。 ケースバイケースでしょうが、合理的な制度です。期限限定ではあるが、将来ビジョンをしっかり持って、住むことだけを目的とするならば借地でもよいわけです。住宅用地としての借地利用や借地権については 、地域の司法書士におたずねください。建て主=借り主側にたったノーハウを持っているはずです。□ A 建築条件付き土地。住宅建設にかかる約束事がついている土地です。土地の売買の売り主側の条件として 、あらかじめ建築業者やハウスメーカーなどが指定されています。 住宅建設の特徴としては、ある程度の間取り的な自由度はあると思いますが、コストや部品調達先等のことから。仕上げ材や工法など建築の急所となる仕様についてのイニシアチブは、建て主側でなく施工者側にあります。このシステムでは、売買契約後、施工者が決まっているため競争入札や見積もり合わせなどといった、わずらわしい業者選定のプロセスもなく、建て主はほとんど何もせず仕様決定に介入することもなく、建築の主導権を施工者にあずけたまま、工事が完了します。□ A’ 建売住宅(建設中含む)があります。地域の施工者のものやメーカーの規格型住宅(※2)が乗っている建築条件付き土地のひとつです。 (※2)型としての住宅建築。規格住宅についての原点は戦後成長期の住宅事情にあり、その開発は相応の学問的知見をベースにしたものでした。その時代から半世紀後の現代、そういったコンセプトもぼけてしまい、おぼろげであやしいものもありますが、当時の系譜をくむメーカーの住宅のなかには、それなりに評価すべき内容のものもあります。 規格型住宅の難点としては、一律のパーツや工法、固定されたマッス(部屋のかたまり・ブロック)で構成されるため、三角形に曲がった土地とか菱形の段々地であるとか、設計時の想定に含まれない条件の土地についての融通性、プランニング上の小まわりがきかないことなどがあげられます。□ A" 住宅付きの土地。土地の売買ために、住宅が付加価値として土地の上にオマケとして乗っているケースです。□ 一般に、建て売り住宅の契約は、新築を施工者に建設してもらう場合に締結する建築工事請負契約(建設業法上の契約)とは異なり、宅地建物取引業法にもとづく不動産を売買するための契約となります。出来合いをを土地と共に購入するので、建設プロセスや工種ごとの施工者がどのような施工をしたかや責任の所在などについては曖昧または空白となります。 B 建築条件付きでない、整形の土地。きれいに区画された分譲地など。□ B’ 建築条件付きでない、整形でない土地。狭小な土地、細い路地で道路に接する旗竿地、斜面地、などの様々な形状の不整形地があります。 不整形地の地価は整形地に比べて一般的に低く設定されています。しかし安価ではあるが土地利用上きびしい形状であるわけで、建築をじょうずに形状にマッチさせるには、それなりの創意工夫や柔軟な発想、気の利いた空間構成が求められることとなります。□ C 競売地。一般的ではありませんが、競売にかけられている土地です。取得は入札期間内の落札によります。裁判所が差し押さえた物件で、裁判所が選定した不動産鑑定士を介し物件評価額(売却基準価額)を設定したものです。 参考 検索 『長崎地方裁判所 不動産競売物件情報』 競売の土地の売却基準価額は、地価公示価格より安く設定されている一方、売却基準価額に近い額ではたして落札できるかどうかといった不確定要素もあります。ほか、入札参加に入札保証金が必要なこと、落札後の土地に占有者がいる場合は退去交渉を落札者自らが行わなければならないこと、などのリスクも伴います。□ |
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<資金計画/住宅ローン> 資金計画について。 一般に知られているものとして、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫) の35年固定金利のフラット35があります。 長崎県内にある地元の銀行では、フラット35、のほか、全期間固定金利型住宅ローン、オール電化住宅ローンなどが取りあつかわれています。 参考 キーワード 検索 『住宅金融支援機構 長期固定金利住宅ローン フラット35』 『長崎県内の銀行 住宅ローン』 『 〃 フラット35 融資手数料定率型 標準』 『 〃 フラット35 融資手数料定額型 標準』 『 〃 オール電化住宅ローン』 『 〃 住宅ローン 全期間固定金利型』 『 〃 住宅ローン 割引金利 優遇』
住宅ローン・金融商品にに関しては、直接、住宅金融支援機構や地域の金融機関などとご相談ください□ |
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<不動産登記/土地・建物> 住宅の新築や建て替えに関連する一般的な登記として、建物表示登記・抵当権設定登記・建物滅失登記・登記名義人住所変更登記・所有権保存登記などがあげられます。 建物表示登記。新築や建て替えなどの際の、住宅が建ったときに行う登記です。 抵当権設定登記。フラット35や地元銀行の住宅ローンなどを組む際に行う登記です。司法書士が手続きをします。 建物滅失登記。建て替えの場合など、今まであった建物の解体除却後、1ヶ月以内にその所有者が行うように義務づけられています。 参考 検索 法務省ホームページ 『法務省 登記 不動産登記』 登記は権利に関しての建て主が行う大切な手続きです。一連の手続きは司法書士や土地家屋調査士が建て主の依頼を受けて行います。 ややこしそうですが、住宅建築のタイムスケジュール(※3)中で、土地取得、資金計画、既存建物除却、建築完了などの適切なタイミングにあわせて、きちんと行っていけば良いのです。 (※3)建築士が作成する設計・工事工程表(設計監理の場合)・施工者による工事工程表・金融機関の参考スケジュール。建築士などの専門家のチェックを前提に建て主が作成した工程表など。 必要な手続きや登記にかかる費用のことなど、くわしくは地域の司法書士や土地家屋調査士におたずねください。□ |
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<税/不動産取得税> 土地取得、住宅建設にともなう税 不動産取得税の減額特例 住宅。新築住宅の軽減特例について、 新築住宅の軽減が適用(50u以上240u以下、他要件を満足)の場合、
土地の取得の場合、
土地。新築住宅の土地の減税特例については、 土地取得から2年以内(平成26年3月31日までは3年以内)に新築した場合、住宅を新築した人が1年以内にその宅地を取得した場合など、いくつの要件かあり、それに適合する場合には、 (ア)45,000円
うち大きい方の額が適用され土地取得の不動産取得税額から減額されます。 参考 長崎県ホームページ 『不動産取得税 長崎県 税務課 不動産取得税の減額』 くわしくは県のホームページや県税務課におたずねください。□
市県民税の控除 参考 検索 行政ホームページ 『佐世保市 新たな住宅ローン控除の創設について 平成22年度』 『長崎市 市・県民税の住宅ローン控除について』 新たな住宅ローン控除の対象者については一定の条件があります。各自治体窓口におたずねください。□ |
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<10年保証/住宅の品質確保の促進等に関する法律> 住宅の品質確保の促進等に関する法律 10年保証。法律(品確法の瑕疵担保責任)で、施工者側に新築住宅の完成引き渡しから10年間の瑕疵担保責任が義務づけられています。 参考 検索 キーワード 『住宅の品質確保の促進等に関する法律 第九十四条』 瑕疵(かし)の対象は、構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分として政令で定められています。構造耐力上主要な部分は、基礎・土台・柱・壁・すじかい・火打ち・小屋組など。雨水の浸入を防止する部分としては、屋根・外壁・外部サッシ建具まわりなどです。 ただし、内部仕上げ材の剥離や色あせなどはふくまれません。□
<補遺/住宅性能保証制度/住宅保証機構株式会社>
住宅性能保証制度について。沿革として国交省の流れをくむ住宅保証機構株式会社の保証制度です。たとえば仮に、新築後10年経過しないうちに、品確法94条にある瑕疵が生じ、さらに施工者が保証対応できなくなった場合はどうするか。そのような時の保証制度です。 品格法の瑕疵担保責任を義務づけられる施工者にとっての保険です。任意であって法的義務はありません。住宅保証の適用の流れは、住宅保証機構に登録した施工者が住宅を新たに建設したとき住宅保証機構にその住宅を申請し認可されれば、その住宅への保証が適用されます。 保証内容は、品確法94条の瑕疵対象の部分には長期保証が適用され、また品確法94条では除外されている仕上げ材の剥離や内部建具の変形、浴室の水漏れなど設備の不具合についても1〜2年の短期保証が適用されることとなっています。 参考 検索 キーワード 『住宅保証機構』 施工後の住宅建築に不具合があったときの保証ですが、施工者側にとっての任意の保険でもあります。しかし普通に考えてみれば、そもそも品確法94条にある瑕疵(かし)は基礎や柱や梁、屋根や外壁からの雨漏りなどといったところが対象です。当たり前に施工していればまずおこりえない欠陥です。またこの保証制度は一律に義務というわけでもなく、実に痛し痒しのところです。そのようなこともふまえ、施行者を選定する初期の段階では、きちんと施工でき、10年保証にも対応できる体制が整っている施工者を何社か見きわめておくことが必要です。□ |
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<解体撤去/廃棄物の処理及び清掃に関する法律> 新築のため、既存の建物を解体除却しなければならない場合についてです。 解体撤去について。解体にともなう廃材は、少し前まで、現在のようにきちんとした分別を念頭において取り扱われていませんでした。一方で、その頃の解体撤去にかかるコストは、現在ほど高くありませんでした。少しばかりネット検索してみていただければ分かるように、近年の解体撤去にかかる費用は対象建物の規模にもよりますが、相当な額になっています。環境や再資源化にかかる関連法の強化により、しかるべき分別、処理をする必要が生じ、解体撤去しくみが以前より特化、分化したためです。 参考 検索 キーワード 『廃棄物の処理及び清掃に関する法律 』 『分別解体 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律』 『建設リサイクル法 〃 』
住宅にかかわらず建築コストについては、地域ごとの差異はあるにしても、以前より透明化、常識化していることなど等もあり、専門でない一般の人でもある程度までは把握しやすくなっています。しかし、解体コストについては、比較的近年、強化された制度があることや、構成コストも建設コストとまったく異なる仕組みによること等から、一般の人が直感的にコスト把握できるまでには、もう少し時間がかかるだろうと思います。 近年、解体設計なるものをはじめて経験いたしました。目的は解体費の設定なのですが、構造図すらない数千u規模の古い施設を図面化したのち、現行の分別解体などにかかる法律や建築廃棄物の再資源化などにふまえ、コンクリートやモルタルなど安定埋立できるものできないもの、特定業者に引き取ってもらうもの、鉄骨鉄筋やアルミなどの有価物などに分別しそれぞれボリュームを出し、コストを設定する内容のものです。ここで分かったことは、解体建物の規模か大きければ、大きいほど各部位の体積や重量についての精度が上がる、逆に規模が小さければ小さいほど、より詳細な図面が必要となる。といったことです。 古い家屋の解体においても、理屈的には、解体設計と積算による方法で、コストの透明化、状況によっては圧縮ができるわけですが、対象家屋建物は大きくても、仮に床面積が三百uぐらいだとしても、調査や図面化、その後、設計積算をへて入札または見積もり合わせ、業者選定といった一連の作業にも相応の費用がかかります。はたしてそのような作業プロセスをへてまでして解体費の透明化が、建て主の住宅事業費全体から見てコスト軽減に有効にはたらくかどうか、規模にもよるわけですが判断に難しいところです。小規模な家屋の場合などは地域の信頼できる施工者を何社かピックアップしておくといったところが妥当な線だろうと思います。□ |
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<発注方法/建て主と施工者のイニシアチブ> 発注方法について。建築主が発注し施工者が工事を請け負います。 建設中の建物は、工事が完全に終わるまでは原則、施工者のものです。施工者の管理責任下であることから、建設中の仮囲いの中の資材や築中建物などの事物は施工者のイニシアチブ下にあります。たとえ、おかしいところがあったとしても、契約に則した一連の合意手続きを無視して、気に入らないからといって勝手に傷つけたり壊したりすることはできません。□ 住宅建築の発注:形体は大きくは2つに分かれます。建設はいくつかの工種の総合で成り立っていますから、それぞれに専門の職人や技術資格者などが完成までかかわっていきます。発注:形体のひとつは、その全体をひとつの施工者(工務店・建設会社・ゼネコン)に一括して請け負わせる一括発注、もうひとつは工種ごとに請け負わせる分離発注:の形体です。 ここでは、住宅に適応する発注形態について整理してみます。 @ 設計施工一括発注方式。 設計から建設までひとつの施工者が元請けとして工事全体を請け負います。建て主は完成した建物を受け取るだけよいシステムです。なお、その設計作業の対価は、設計施工住宅の工事費に含まれることが通常です。施工だけを専業としない設計施工の施工者においても、設計は実働として相応の手間がかかるわけです。□ A 施工一括発注方式。建築士を第三者につけ現場では進捗やコストや製品性能など仕様全般の監理を前提として設計などの完了後、ひとつの施工者を元請けとして工事全体を一括発注する方式です。□ B 施工分離発注。複数の工種に発注しますので、工種ごとに元請けも分かれます。各工種の現場に入るタイミングもまちまちになりますので、現実問題として、その調整に第三者を入れる必要があります。住宅規模でも2〜5工種あり、工種ごとの施工者の選定・契約締結、監理面ではそれぞれの工程に則した注意深いハンドリングが求められます。□ 相当規模の建築の分離発注の場合などは、分離発注にともなう利害当事者ステイクホルダーも複雑化しますので、さらに別の第三者がマネージに入り総括的にハンドリングしていくといったコンストラクション・マネージメントCM方式をとる分離発注方式もあります。 C 建て主の自力(DIY)による建設。身近なところではなかなか目にすることはありませんが、ちゃんとした古くからある建築の方法です。手がおよばないところは分離発注方式になりますが、建築のイニシアチブは建て主にあります。□ 発注方式ごとに、それぞれに長所、短所があります。発注の仕組み、発注のタイミング、第三者のあるなし、また設計や現場で建築をコントロールする核となるイニシアチブ主導権が、発注側の建て主、発注を受ける側の施工者、また第三者のあいだでどうはたらき、どのように配分されているのか、そのバランスとは何か、といった視点から吟味してみるのもひとつと思います。大切なことは、住まい手である建て主が、住宅の規模・コスト減の手間・イニシアチブ・工事期間など、ご自身の諸事情にみあった発注方法を見定めておくことではないかと思います。 いずれにしても、発注する側とされる側があっての住宅の建築です。住宅建築においては、どのような発注形態であれ、建て主側の建築イニシアチブの当然のあらわれとして、発注を受ける施工者は、建て主が納得して選んだ施工者にほかならないことが根底になければなりません。□ |
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<施工者の選定/入札・見積り合せ・特命> 施工者の選定(業選)について。ここでは、施工者の設計施工一括発注については割愛します。 指名競争入札。言葉として入札は、インターネットのオークションや報道ニュースなどで、一般に広く浸透しています。建築の入札では、不特定多数のオークションとちがい、発注者側が指定した何社かの施工者(工務店・建設会社・ゼネコン)で行われます。官公庁施設工事などでは入札保証金が原則必要です。発注者側の現場説明後、一定期間をへて、入札が行われ、発注者側で開札します。建築の入札では原則もっとも安い金額をいれた施工者が発注を受ける権利を得ますが施工者側にとって正式に受注となるのはこの時点ではなく、工事契約締結後となります。入札結果は相対的ではありますが、金額には相応の開きが生じます。 入札を行うために周到な準備をいたしますが、図面以外では、建て主側の工事内訳書が核となります。そこには全体工事金額のほか工事種別ごとの金額およびその根拠が押さえられています。準備はその他さまざまに必要ですが、基礎となるのは的確で効果的な結果を出すための工事内訳書、その精度です。□ 入札では複数の経験を積んだプロの施工者が参加します。そのため、建て主側においてもきちんとした工事費根拠の押さえが必須となります。第三者として対応する建築士は、実施図面作業の後半ごろ申請手続き準備などと併行して工事内訳書の作成を行いますが、そのほかにも入札のために必要な準備を周到に行います。 施工者側にとっても入札は真剣勝負であり厳粛なものです。建て主側にもそれにこたえうるしっかりした態度と権限イニシアチブが求められます。また納得のいく結果を出すために第三者建築士にも、入札についての、知識、経験、センスなど、入札準備から特定にいたるまでの総合的なスキルが不可欠となります。□ 見積もり合わせ。あらかじめ選定した複数の施工者から見積書内訳明細をだしてもらいます。建て主の代理人である建築士が内容をチェック、評価し、1社にしぼった後に、建て主の承認の下に1社特命します。何社かのうちから1社を特命するといったスタイルは、指名競争入札とも似ていますが、指名競争入札の厳格さに比べるとルーズです。見積もり合わせの場合、事前準備として正規の積算はおこなわず、市場価動向にふまえた概算内訳書をベースにします。それは住宅では単価に掛ける規模がさほど大きくないこともありますが、建物コストが比較的ステレオタイプ化しており、よほど個性的な住宅建築(※4)でないかぎり、市場価動向にふまえた概算内訳の枠内で、施工者から提出される見積書内訳明細が評価できるからです。ただし、住宅の場合でも、新しい構造工法や特殊な部材、高そうな建具や機器などふくむ場合は、その部位の積算は行っておきます。 (※4)個性的な住宅建築 キーワード検索
見積もり合わせは、指名競争入札のように、住宅規模を超える相当規模のすべての建築にいたる施工者特定に通じるしっかりしたルール付けがないともいえますが、建築士の準備や手間にかかる負担も正規の入札ほどにかかりません。見積もり合わせは、ほとんどの住宅建築家が入札の代用として採用している方法だといえます。□ 特命。建て主の意志、納得の上でひとつの施工者をで特定するスタイルです。最初から1社決めではなく、いくつかの施工者を選定し、その中から内容をよく吟味しながら1社に絞っていく方法もあります。 建て主の施工者への期待にたいし、施工者が建築でどう答えるか。結果は完成後でしかわかりません。コストコントロールやその透明性について気になるところもありますが、規模的にこじんまりした建築であれば、ひとむかし前の家普請の系譜をくむ地域の施工者に特命するのも決してわるい方法ではありません。体制が整っている施工者であれば、設計施工一括発注方式でよいと思います。 □ |
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<契約の締結/約款書類/設計者や施工者の決定> 契約の締結。住宅建築は一生に一度の買い物にたとえられるようにたいへん高額です。現在、建て主、設計事務所、工事施工者、各ステイクホルダー相互間においてきちんと契約を取り交わすことは必須です。 今では、利益当事者相互間の契約締結は当たり前のこととして常識化していますが、むかしは心意気、口約束で受けていた時代もあったそうです。義理人情と信頼、一見かっこよさそうですが、建築というものにおいて、こういった感覚や行為は、きわめて危険で愚かなことです。現在の建築工事現場を見ても分かるように、労働安全基準法の遵守徹底を軸として、現場の雰囲気は四半世紀前よりもずいぶんと洗練されてきています。また設計者側においても耐震偽装などへの猛省から建築士法改正などあり、建築士も、みずからの職能を研鑽していかねばならない時代の中にいます。変化の過程の中にいることを受け入れ応じていく、それは契約書においても同じです。既成の契約書はいくつかあります。 ここでは、古くからよく知られている民間連合(四会連合)の契約約款書類を紹介しておきます。時間があれば、ほかの契約書とのちがいを調べてみるのも良いと思います。 <建て主=設計者>
<建て主=設計者=施工者> または <建て主=施工者(設計施工)>
民間連合、旧四会民間連合 の四会について。
契約書の内容もまた、時代の要請・合理性に応じて、また住まい手の要求の正当性に応じて変化していってしかるべきです。空白なままでは満足できないような内容があれば、当事者間のコンセンサスにふまえ新たな契約書面にして追加していっても良いわけです。住まい手側の建築イニシアチブを確定するのは契約締結時にあるといっても過言ではありません。自立した立場で冷静に内容を理解し、手間をかけてでも、納得のいく契約書をかたちづくってください。建築が完成するまでの課程では、これが法律のようにはたらきます。□ |
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<外構/石庭、坪庭、露地> 外構(植生、舗装など)について。住宅においては、庭や植栽など外部の工事は、建て方や資材置き場の必要などから、だいたい引き渡し前後に行われるか、あるいは外構の中の排水溝やカーポートなど以外の、植生や土表面(地べた)の手入れについては先送りし、将来工事、自力(DIY)施工などで対応したりするケースも多いようです。 そのように、土表面(地べた)を対象とする外構工事(植生、舗装工事など)は、構造や防水工事に比べて、コスト面や他の部位への影響リスク面において負担が少ない対象部位ではあります。 石庭、坪庭、露地の設計/デザイン/空間構成 これから住宅を考えていらっしゃる方を対象/スケッチ(無料です)。□ |
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<備品/造り付け家具> 家具、無垢材、内部収納の造作 床の間の拭き漆 外部ウッドデッキ これから住宅を考えていらっしゃる方を対象/アドバイス(無料です)。□ |
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江原建築設計事務所 1級建築士事務所 |
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